光熱費のかからない家づくりを目指して
就学前の活発な2人の子どもを持つKさんご夫妻の家づくりは、公園に隣接する180坪超の売地と出会ったことから始まりました。<「公園の木々に寄り添うような土地は自然に恵まれ、子育てにぴったりの環境。いつかはと考えていた家づくりが一気に現実になりました」。
そう話すKさんが漠然と思い浮かべていたわが家像は、省エネで暖かく暮らせる住まい。
住み心地や経済性を左右する住宅性能には、しっかりと予算を充てようと考えていたKさんは、住宅性能に定評のあったキクザワに新築を依頼。同時に、自身もこれからの住まいづくりについて学び始めました。
そして、調べるほどに「太陽光発電でエネルギーの自給自足を目指すZEHやV2Hシステムなどの採用など、興味はどんどん広がっていった」と言います。そんなKさんにとって、近年のZEH住宅の採用率が約6割というキクザワは頼もしい相談役。二人三脚でプランづくりに取り組んだといいます。最終的には、最高レベルの住宅性能を採用し、太陽光発電を活用してZEHの一歩先を行くオフグリッド的な住まいづくりに挑戦することになりました。
暖冷房も太陽光を活用しエアコン1台で完結
「地域柄、降雪による電力不足も想定されます。ライフラインとなる暖房や給湯などは、電力会社の送電網も使えるようにしました。電力の安定供給を第一に考えると、完全に住まいの電気を自給自足するオフグリッドにはできませんでした」。
その一方で、送電網から独立させた自家消費専用システムを設けて家電や蓄電池に利用。さらに電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)から住宅に配電できるV2Hシステムも採用するなど、太陽光発電をフル活用できる体制を整えました。
また、キクザワ初の試みとして、最高レベルの断熱・気密性能と太陽光の電力を生かした、寒冷地用エアコン1台によるオリジナルの全館空調システムも採用。全室に設けた床ガラリへ暖気や冷気が送られ、通年で室内を適温に保ちます。小屋裏に設置した16畳用エアコン1台で約46坪の空間を十分に暖房でき、「家の隅々まで暖かく、満足です」とKさん。
パネルヒーターを採用するセントラル暖房に比べ、コストを大幅に削減しながら、快適な室内環境が実現できました。
「電気の自給自足は経済性のメリットと同時に、環境への配慮も重要な側面。子どもたちが安心して過ごせる環境を未来へ引き継ぐために、脱炭素化を意識した家づくりもこれからは必要だと、改めて感じました」。
家族で育む楽しみを残した余白のある家
UA値0.19、C値0.15という高い断熱・気密性能やエネルギーの性能やエネルギーの自給自足に徹底してこだわった一方で、Kさんには、家族がお互いの存在を感じつつ、それぞれの時間を楽しめる居場所を備えたいという希望がありました。そのうえ、将来のライフスタイルの変化に柔軟に対応できる、余白を持たせた空間にしたかったそうです。
設計を担当した菊澤章太郎さんはその希望に応え、奥行きのある建物の形状を生かし、1階はオープンなLDKから水まわり、寝室へとつながり、パブリックからプライベートへ、生活空間を緩やかにゾーニング。半地下にはKさんの趣味室兼書斎、中2階には子どもたちの遊び場となる和室、2階には奥さんの趣味室を設けました。
また余白を大切に、造作はつくり込み過ぎないことを心がけました。「住まいづくりは出来たときが完成じゃないので、ご家族で暮らしながら、変化を楽しみながら、ゆっくり育てていただきたいと思っています」と菊澤さんは話します。
道産ナラ無垢材の床、珪藻土の壁、タモ材を基本とした造作家具。
太陽の恵みとキクザワらしい自然素材に包まれたシンプルな空間は、いまだ発展途上。これから家族の暮らしに磨かれ、彩られて華やかな表情をまとっていくことでしょう。